一級建築士の星悠真です。
「暖房は20度が推奨」と耳にして、実際に試したものの寒くて困っていませんか。
実はこの情報には誤解があり、正しくは 「設定温度20度」 ではなく 「室温20度」 が推奨です。
多くの住宅では室温20度を実現するために、暖房設定は22〜25度が必要になることがあります。
とはいえ設定温度を上げると電気代も上がります。暖房設定を1度上げると電気代はおよそ10%増えるため、できれば避けたいですよね。

この記事では、設定温度を上げずに暖かく過ごす方法を、建築の専門家としてわかりやすく解説します。
設定温度が20度だと寒いのは、室温と一致しないから

20度設定で寒い理由は、設定温度と室温が同じにならないためです。室温が外気に影響される以上、断熱性能が弱い家は設定より低い温度になります。
「20度推奨」は設定温度ではない
多くの人が混同しますが、国が推奨しているのは 室温20度です。設定温度20度ではありません。
断熱性能が低い家では、設定20度でも室温16度前後になることがあります。
室温20度を達成するには、22〜25度の設定が必要な家は珍しくありません。
暖房設定を上げると電気代が10%増える
暖房設定を1度上げると、消費電力は約10%増えます。
これは暖房が家電の中でも特に電気を使うためです。

だからこそ、できるだけ設定温度を上げずに暖かくする工夫が必要になります。
断熱性能が低い部屋は熱が逃げやすい
設定温度が20度でも室温が上がらない原因の多くは断熱性能です。
特に窓や床、外壁の断熱不足は室温低下の原因になります。
熱が逃げる家では設定温度を高くしても暖まりにくく、電気代が上がり続けます。
設定温度20度で寒い家の特徴|当てはまれば断熱不足

20度で寒い家には明確な特徴があります。もしあなたの部屋も当てはまるなら、断熱改善が必要です。
窓際が冷える
窓は家の中でもっとも熱が逃げる部分です。
アルミサッシの単板ガラスは特に冷えやすく、窓際で冷気を感じる原因になります。
床が冷たく体感温度が下がる
床の断熱材が不足していると、足元の温度が下がります。
体感温度は足元の温度に大きく左右され、床が冷たい家は暖房が効きにくく感じます。
隙間風がある
築年数が古い家では気密性能が低く、外の冷気が流れ込みます。

この状態だとどれだけ暖房しても暖まりません。
対策アプローチ①:部屋の断熱性能を上げる
室温20度を効率よく実現するには断熱改善が最も効果的です。設定温度を上げるだけに頼らず、根本から暖まりやすい部屋に変えましょう。
窓断熱がもっとも効果的

窓は熱の約6割が逃げる部分です。
窓断熱を改善すると暖房効率は劇的に上がります。
- 内窓の設置
- 断熱フィルムの貼り付け
- 厚手カーテン
この中でも、内窓は投資対効果が高く、部屋の温度が2〜4度上がることがあります。
内窓(二重サッシ)

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内窓(二重サッシ)とは、既存の窓の内側にもう一つ窓を取り付ける方法です。窓が二重構造になり、その間に空気層ができます。
空気層が断熱材の役割を果たし、外の冷気を大幅に遮断します。
ただし、設置には工事が必要なため、賃貸の場合は導入が難しいです。
断熱フィルム

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賃貸でも手軽に対策できるのが、断熱フィルムです。ガラス表面の熱移動を抑え、冷気の侵入を和らげます。
内窓ほどの効果は期待できませんが、何もしない状態よりは確実に改善します。
厚手カーテン(断熱カーテン)

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特に窓が大きい部屋では、効果を実感しやすい方法です。
厚手カーテンは、室内と窓の間に空気層をつくります。この空気層が外の冷気を遮断し、室内の暖気を逃がしにくくします。
床を暖かくすると体感温度が改善

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床暖房が理想ですが、ラグや断熱マットを敷くだけでも効果はあります。
足元の温度が上がると体感温度も上がり、設定温度を上げずに済みます。
隙間風対策で体感温度を大きく改善

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サッシのパッキンやドア下の隙間は冷気の侵入口です。
気密テープを使うと暖房効率が上がり、設定温度を下げられます。
サーキュレーターで空気を循環させる

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サーキュレーターを設置することで、暖かい空気は天井に、冷たい空気は床に溜まる温度ムラを解消できます。
サーキュレーターを上向きに設置し、天井の暖かい空気を攪拌させることで、床付近の空気と混ぜ、足元の寒い感覚を軽減します。
加湿器の選び方は以下の記事で解説しています。是非参考にしてください。
サーキュレーターは部屋の広さで決める!選び方と厳選7選|一級建築士厳選【2025年版】
対策アプローチ②:部屋の湿度を上げる

湿度は体感温度を左右する大きな要素です。湿度40〜60%を保つと暖かく感じ、設定温度を下げることができます。
湿度が低いと体感温度は下がる
乾燥した空気は体の熱を奪うため、同じ温度でも冷たく感じます。湿度が30%台では、室温20度でも肌寒さを感じることがあります。
加湿器で体感温度を上げる

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加湿器を使って湿度を40〜60%に保つと体感温度が上がります。適切な湿度は喉の乾燥も防ぎ、健康にも良い影響があります。
加湿器の選び方は以下の記事で解説しています。是非参考にしてください。
加湿器は「木造和室」「プレハブ洋室」どっちを選ぶ?一級建築士が適用畳数を解説【マンション・戸建て】
洗濯物の室内干しも効果的

簡単な湿度アップ方法として、室内干しがあります。加湿器を使えない場合でも、湿度を保つ手段として有効です。
対策アプローチ③:パーソナル暖房の活用
パーソナル暖房で体感温度を上げることも効果的です。直接体を暖めるため、設定温度を上げるより効率が良いです。
デスク下のパネルヒーターで足元を暖める

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在宅ワークで足元が冷える人に最適です。温める範囲が狭いため、少ない電力で体感温度が上がります。
▼在宅勤務×パネルヒーターについて詳しく知りたい方は以下の記事をチェック
エアコンがない部屋の在宅勤務の寒さ対策|パネルヒーター+厚着が最強な理由
セラミックファンヒーターで局所的に暖める

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脱衣所やキッチンなど、短時間で暖めたい場所に最適です。消費電力は大きいものの、使用時間が短いため効率が良い暖房です。
電気毛布や着るこたつで省エネしながら暖まる

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洗濯の手間は発生しますが、電気毛布や着るこたつは消費電力が非常に低く、体感温度をアップできます。体の芯が温まるため、室温が低くても快適に過ごせます。
まとめ|断熱・湿度・パーソナル暖房を組み合わせて効率よく暖まろう
暖房20度が寒い理由は、設定温度と室温が一致しないためです。
実際には 室温20度を実現するために22〜25度の設定が必要になる場合があります。
ただし設定温度を上げると電気代は10%増えるため、なるべく上げたくないですよね。
そのために重要なのが、断熱改善、湿度調整、パーソナル暖房です。これらを組み合わせると設定温度を上げずに暖かく過ごせます。
寒さの原因を理解し、効率よく暖かい部屋をつくりましょう。






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