一級建築士の星悠真です。
加湿器を選んでいて、「木造和室〇畳」「プレハブ洋室〇畳」と書かれていて、どちらを基準に選ぶべきか分からないと感じていませんか?
結論から先に言うと、あなたの住まいが断熱性の高い最近の住宅なら「プレハブ洋室」を基準に、築年数が古い「木造住宅」なら木造和室を基準に選ぶのが正解です。
なぜなら、この2つの表記は「構造の気密性と断熱性能」を示しているからです。実は、家が木造かどうかは直接関係ありません。

この記事では、加湿器の適用畳数表示の正しい見方を解説します。
さらに、木造・鉄骨・RC造といった構造別、築年数別の選び方も分かりやすく整理します。
「木造和室」「プレハブ洋室」とは?|JIS規格に基づく意味を解説
「木造和室」「プレハブ洋室」は部屋の断熱性能の違いを表す指標です。
どちらも日本産業規格(JIS C 9602)で定義されており、加湿器の加湿能力を試験するときの条件として使われています。「木造」「プレハブ」という表記は、構造材そのものを指しているわけではなく、“気密・断熱性能”という性能値の目安として扱われているのです。
木造和室とは

木造和室とは、木造住宅の中でも壁や天井の断熱が弱く、気密性が低い部屋のことです。
写真のような、昔ながらの木造戸建てのイメージです。
畳や障子、木製の建具が多く使われ、窓も単層ガラスであることが一般的です。
空気の出入りが多いため、湿度が上がりにくいのが特徴です。
プレハブ洋室とは

一方で、プレハブ洋室とは、壁の内部に断熱材を入れ、気密性の高いサッシなどを使用した住宅を指します。
いわゆる「断熱性が高く、湿度が逃げにくい部屋」です。
築浅のマンションや最近建てられた一般的な戸建て住宅は、ほとんどがこの条件に該当します。木造住宅であっても高断熱高気密であれば、プレハブ洋室扱いです。
そのため、同じ加湿器でも、「木造和室」の部屋と「プレハブ洋室」の部屋では加湿できる面積が大きく異なります。

木造和室10畳用の機種なら、プレハブ洋室では16畳ほどの広さに対応できる場合もあります。
築年数と構造別に見る|どちらの表記を選ぶべきか
あなたの家がどのような構造で、いつ建てられたかによって選ぶ基準が変わります。
建物の構造と築年数ごとに、加湿器の「木造和室」「プレハブ洋室」のどちらを基準にすべきかを表にまとめました。

実際は、同じ構造・築年数でも気密性や断熱性によって異なるので、あくまでも一般的な傾向として捉えてください。
| 建物の種類 | 築年数の目安 | 該当する分類 | 気密・断熱性能の特徴 |
|---|---|---|---|
| 木造戸建て | 築30年以上 | 木造和室 | 壁の断熱材が薄く、単層ガラスで隙間が多い |
| 築10~30年 | 中間(木造寄り) | ある程度高断熱。アルミサッシ・単層ガラス | |
| 新築、築10年以内 | プレハブ洋室 | 高気密高断熱。樹脂サッシ・複層ガラス採用 | |
| 木造アパート | 築年数問わず | 木造和室 | 断熱が弱く気密性が低いケースが多い |
| 鉄骨造アパート・マンション | 築10~20年 | プレハブ洋室 | 断熱材次第だが気密性は中程度 |
| RC造マンション | 築20年以内 | プレハブ洋室 | 高い気密性と断熱性を持つ |
| 鉄骨造・RC造マンション | 築30年以上 | 中間(木造寄り) | サッシ劣化などで断熱低下の可能性あり |
この表を見ると分かるように、建物の構造と築年数は、加湿効率に大きな影響を与えます。
特に木造住宅では、窓や断熱材の性能差が湿度の上がりやすさを大きく左右します。

例えば、築10~30年の木造戸建てで10畳の部屋なら、中間で木造よりの「木造和室8.5畳用/プレハブ洋室14畳」などを選ぶとベストです。
天井が高い部屋や吹き抜けリビングではどう選ぶ?

次に注意したいのが、天井高です。
天井が高い空間や吹き抜けのある部屋では、加湿器の対応畳数を1.2〜1.3倍程度大きめに選ぶのが正解です。
天井高が加湿効率に与える影響
加湿器の「〇畳用」という表示は、天井高2.4メートルを前提としています。
しかし、実際には3メートルを超えるリビングや吹き抜け空間も多くあります。室内容積が増えると、それだけ多くの空気を加湿する必要があり、同じ加湿器では湿度が上がりにくくなります。
そのため、天井が高い部屋では、加湿器の対応畳数を1.2〜1.3倍程度大きめに選ぶのが基本です。
吹き抜け空間の注意点

image : Amazon
吹き抜けがあるリビングでは、湿った空気が上部に滞留しやすく、床付近の湿度が下がることがあります。
この場合、サーキュレーターで空気を循環させることが有効です。
サーキュレーターの選び方とおすすめモデルは、以下の記事で解説しています。是非参考にしてください。
サーキュレーターは部屋の広さで決める!選び方と厳選7選|一級建築士厳選【2025年版】
「正しい加湿器の選び方」3ステップ

ステップ1:自分の住まいの構造を把握する
あなたの家が木造・鉄骨・RC造のどれにあたるかを確認しましょう。また、窓サッシの劣化状況や性能をチェックしましょう。
これにより、木造和室かプレハブ洋室かの判断が明確になります。
ステップ2:築年数で断熱性能を見極める
築年数が30年以上の住宅では、断熱材が薄く、窓の気密性が低い傾向があります。その場合は、木造和室を基準にした畳数を選ぶほうが確実です。
一方で、新しい住宅やリフォーム済みの物件であれば、プレハブ洋室を基準にして問題ありません。
ステップ3:加湿量を確認して、余裕を持ったモデルを選ぶ
畳数表記だけでなく、加湿能力(mL/h)を見て、必要量に余裕を持ったモデルを選ぶと、湿度が安定しやすくなります。
加湿器は「1時間あたりにどれだけの水分を空気中に放出できるか」で性能が決まります。
特に冬場は、外気温が低いほど湿度が下がるため、加湿能力が高いほど快適さを維持できます。
まとめ|加湿器は「木造和室」か「プレハブ洋室」かを建物構造で見極めよう

加湿器を選ぶとき、「木造和室」「プレハブ洋室」のどちらの畳数を基準にするかは、あなたの住まいの構造で決まります。
築年数が古い木造住宅や木造アパートは、壁や窓の断熱性が低く湿気が逃げやすいため「木造和室」表示を参考にしてください。一方で、RC造や鉄骨造のマンション、新しい戸建て住宅は断熱・気密性が高く「プレハブ洋室」基準で選ぶのが正解です。
加湿器の畳数表示は、部屋の広さだけでなく「空気の逃げやすさ」を考慮した目安です。
そのため、天井が高い部屋や吹き抜けのあるリビングでは、1.2〜1.3倍ほど大きめの加湿能力を選ぶと快適さが続きます。加湿量(mL/h)の数値も参考にすると、より正確に判断できます。
家の構造を正しく見極めて加湿器を選べば、冬の乾燥を防ぎ、結露やカビのリスクを抑えることができます。加湿器は「住まいの環境を整える大切なパートナー」です。
是非適切な加湿器を選んで、最適な湿度環境をつくりましょう!
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