一級建築士の星悠真です。
賃貸アパートやマンションで、「エアコン暖房をつけているのに部屋が全然暖まらない…」と感じていませんか。
この記事では、賃貸でエアコンだけだと寒くなる本当の理由と寒さ対策を建築のプロの視点から解説します。
すぐ実践可能で、確実な寒さ対策をまとめて紹介します。
エアコンだけが寒くなる原因は「建物構造」にある
エアコンだけだと寒い最大の理由は、建物の断熱性能が不足していることです。
これが改善しない限り、どれだけ設定温度を上げても部屋は暖まりにくいままです。
ここでは、建築士の視点から原因を詳しく解説します。
鉄骨造と木造の賃貸が寒い理由
鉄骨造や木造のアパートは、コンクリート造と比較すると断熱材の厚さが十分でないことがあります。その結果、外気温の影響を受けやすく、暖房をしても室温が上がりにくい状態になります。
| 構造 | 断熱性 | 外気の影響 | 冬の寒さ | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 木造 | △ | 受けやすい | 寒い傾向 | 壁が薄い物件が多く外気温の影響が出やすい |
| 軽量鉄骨造 | × | 非常に受けやすい | とても寒い | 金属が冷気を伝えやすく冬の寒さが直撃する |
| RC造（鉄筋コンクリート） | ◎ | 受けにくい | 暖かい傾向 | コンクリートが熱を保持し外気温の影響が少ない |
とくに軽量鉄骨造は金属が冷たさを伝えやすく、冬の冷え込みが室内へ直結します。
冬に部屋の壁を触るとひんやりする場合は、断熱が不足している可能性が高いです。
築年数が古い賃貸ほど寒くなりやすい
築年数が古い物件は、断熱基準が今よりも緩いため、壁や床の断熱性能が低い傾向があります。
そのため、エアコンがどれだけ優秀でも、部屋の構造そのものが熱を保持できません。
築20年を超える賃貸の場合は、この影響を強く受けている可能性があります。
窓サッシの性能が極端に低い
寒さの原因で最も影響が大きいのが窓サッシです。
アルミサッシは冷気を伝えやすく、窓際の温度が急激に下がります。
冬の朝に窓が結露している場合は、室内の暖気が窓から逃げている証拠。その状態ではエアコンだけで部屋全体を暖めることは難しくなります。
エアコンだけでは寒い理由は「熱が逃げている」から
部屋が寒くなる理由は、暖房が足りないのではなく、熱が外へ逃げてしまうからです。
対策の方向性がズレていると、暖房費が増えるだけで結果が出ません。ここでは、熱が逃げるポイントを解説します。
窓からの熱損失が最も大きい
冬の熱は、約6～7割が窓から逃げると言われています。そのため、窓周りの対策を行わない限り、エアコンだけでは暖まりません。
特に「窓際だけ異常に寒い」と感じるなら、ここが最大の原因です。
換気口のすきまから冷気が侵入する
マンション・アパートでは、24時間換気システムが建築基準法で義務づけられています。その仕組みにより、外から新鮮な空気を取り入れています。
冬は外気が冷たいため、換気口から入ってくる空気も当然冷たくなります。つまり、構造上どうしても冷気が入りやすいのです。
換気口の冷たい風で悩んでいる方は以下の記事で対策を詳しく解説しています。是非参考にしてください。
マンションの吸気口（換気口）が寒い…閉じていい？一級建築士が教える寒さ対策3選
暖気が天井に溜まりやすく部屋に広がらない
エアコン暖房は天井付近に暖かさが溜まる性質があります。床付近に暖かさが届かないと、体感温度は上がりません。
足元だけが寒い場合は、暖気の循環不足が大きな原因です。
まず試すべきなのは「暖気の循環」
エアコンで暖めても寒いなら、暖気を上下に循環させる工夫が有効です。
この部分を改善するだけで、体感温度が大きく変わる可能性が高いです。
「サーキュレーター」を上向きにして暖気を循環
サーキュレーターをエアコンの反対側の床に置き、上向きに運転すると、天井に溜まった暖気を室内に広げられます。
これだけで床付近の温度が上がり、エアコンの効きが改善します。
空気の循環を意識することで、部屋の上下温度差が小さくなり、暖まりムラを防ぎます。
サーキュレーターの選び方とおすすめモデルは以下の記事で紹介しています。是非参考にしてください。
サーキュレーターは部屋の広さで決める！選び方と厳選7選｜一級建築士厳選【2025年版】
「温風サーキュレーター」で暖めながら循環
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寒冷地や断熱性の低い真冬の賃貸では、通常のサーキュレーターだけでは補助にならない場合があります。その場合は温風サーキュレーターが効果的です。
温風を出しながら空気を循環できるため、エアコンと相性が良く、全体の温度差が小さくなります。
特に足元の冷えが気になる方に向いているサーキュレーターです。
温風サーキュレーターについて詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
【検証】温風サーキュレーターは電気代が高い？一級建築士が選び方を解説
【Tips】エアコンの風向き・風量設定を見直す
エアコンのスイング設定は「見た目・イメージ的には風が広がって良さそう」ですよね。しかし、「下向き固定×自動風量」が冬のエアコン運用のベストです。
詳しくは以下の記事で解説していますので是非参考にしてください。
エアコン暖房はスイングNG？電気代と暖まり方を一級建築士が徹底解説
断熱不足の賃貸は「窓の対策」が最重要
断熱性が低い賃貸で寒さ対策をするなら、最優先で取り組むべきは窓です。
窓の断熱を改善すると、エアコンだけの暖房でも効果が大きく変わります。
「すきまテープ」で冷気の侵入を防ぐ
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サッシのすきまは小さくても、そこから入る冷気は意外に強力です。
古い賃貸やサッシが劣化している場合、すきまテープを貼るだけで、体感できるほど冷気が減ります。
取り外しも簡単なので、まずはこの方法から始めるのがおすすめです。
窓に「プチプチ」を貼って断熱性能を強化
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プチプチは安価で効果が高く、賃貸でも定番の断熱アイテムです。空気層が断熱材の役割を果たし、冷気の侵入と熱の放出を同時に防ぎます。
見た目が気になる方にはおすすめできませんが、貼るだけで効果を感じられる、低コストで実践できる方法です。私も学生時代に住んでいた安いアパートで実践していました。
透明の「窓断熱シート」で見た目も機能も確保
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透明タイプの断熱シートは、光を遮らずに断熱効果を得られるアイテムです。プチプチ同様、貼るだけで窓際の温度低下を防げます。
見た目も重視したい方に向いている対策です。
「断熱カーテン」で冷気侵入を緩和
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厚手の断熱カーテンは窓からの冷気侵入を緩和させることができます。
カーテンそのものが冷気を遮る役割を果たし、また窓とカーテンの間に「空気の層」をつくることで断熱効果が上がります。
足元の冷えに効く「床の対策」の工夫
床が冷たい部屋では、体感温度が大きく下がります。
ここを改善すると、部屋の暖かさが劇的に変わります。
「マット」や「ラグ」で床の冷えを遮断
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ジョイントマットやラグを敷くと、床からの冷気を遮断できます。冷気は下から上へ抜けるため、この対策は非常に効果的です。
床面積が広い場合は、複数のマットを組み合わせると効率が良くなります。
「ホットカーペット」で足元の暖かさを確保
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ホットカーペットは足元を確実に暖められる優秀な暖房アイテムです。
エアコンだけでは改善しにくい足元の冷えを補うことができ、暖房効率が大きく向上します。
エアコンとホットカーペットの併用については以下の記事で詳しく解説しています。是非参考にしてください。
エアコンとホットカーペット併用はアリ？一級建築士が暖かさと電気代を検証
賃貸で使える「補助暖房器具」の比較と注意点
暖気の循環・窓対策・床対策を講じても部屋の寒さが解消しない場合、補助暖房器具の導入を検討しましょう。
賃貸では使用できる暖房器具が限られる可能性があります。安全性と電気代を踏まえて最適なものを選びましょう。
「石油・ガスストーブ」は賃貸で禁止される可能性が高い
多くの賃貸物件では石油ストーブが禁止されています。火災リスクが高く、換気不足による危険性もあるため、契約書で禁止されている場合がほとんどです。
ガスストーブも換気の問題から使用不可のケースが多いため、賃貸では避けるべきです。
賃貸では、電気を熱源とした暖房器具を選びましょう。以下が、エアコン併用を考慮した代表的な暖房器具の比較表です。
| 家電 | 速暖性 | 暖められる範囲 | 電気代 | 賃貸での使いやすさ | コメント |
|---|---|---|---|---|---|
| セラミックファンヒーター | ◎ | 狭い（足元・局所） | 高い | ◎ | 足元の冷え対策に最適 |
| 電気ストーブ（カーボン・ハロゲン） | ◎ | 狭い（近距離） | やや高い | ◎ | すぐ暖かくなるが近距離限定 |
| パネルヒーター | △ | 狭い（デスク周り） | 中程度 | ◎ | 静かで安全、乾燥しにくい |
| 電気毛布・着るこたつ | ◎ | 身体のみ | 安い | ◎ | コスパ最強、足元が冷える人向け |
| オイルヒーター | × | 広い | 高い | △ | エアコン併用では非推奨 |
それぞれについて、簡単に解説します。あなたのライフスタイルに合わせて適切な暖房器具を選びましょう。
セラミックファンヒーター
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電気でセラミックを加熱し、風を当てて温風を送り出す仕組みのヒーターです。
速暖性が高く、足元の冷え対策に向いています。直接温風に当たりたい方におすすめです。
電気ストーブ（カーボン・ハロゲン）
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放射熱による暖房器具です。近距離をピンポイントで暖めることができます。
表面温度が高くなるタイプが多いため、小さい子どもやペットがいる場合は注意が必要です。
パネルヒーター
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電気ストーブ同様、放射熱による暖房器具です。
静音で安全性が高く、乾燥しにくい暖房アイテム。デスク下での使用に向いています。
着るこたつ・電気布団
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着るこたつや電気布団は体を直接温めるため、体感は非常に暖かくなります。
電気代は非常に安く、一日中使っても数円程度しかかかりません。
オイルヒーター（エアコン併用では非推奨）
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オイルヒーターは内部のオイルを電気で温め、その熱を放射することで部屋をじんわり暖める仕組みです。
部屋全体をムラなく温めることができ、乾燥しにくいため、エアコンの代わりに使われるケースが多いです。
エアコンと併用するとメリットが薄く、暖房費が増えるだけになるので避けた方が良いです。
まとめ：賃貸でエアコンだけが寒い理由と対策
賃貸アパート・マンションが寒い理由は、建物の断熱性能不足と、窓やすきまからの熱損失です。
しかし原因を知れば、あなたが今日からできる対策が必ず見つかります。
・サーキュレーターで暖気を循環する
・窓対策を徹底する
・床断熱をする
・安全に使える電気暖房を併用する
これらを組み合わせることで、エアコンだけでも暖かさは大きく改善します。正しい対策を知り、暖かく冬を過ごしましょう。
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