一級建築士の星悠真です。
築年数の古い賃貸アパートやマンションにお住まいで「帰ると、外より部屋の中が寒い」「暖房をつけても部屋がなかなか暖まらない」と感じているあなたへ。
この記事では、なぜ室内が外より寒くなるのかの構造的な原因と、賃貸でも実践できる窓の断熱・補助暖房の対策法を解説します。

構造的な寒さの課題を建築設計のプロ視点で整理し、あなたの悩みを解消します!
外より部屋が寒く感じる賃貸住宅の構造的な理由
結論として、築年数の古い賃貸マンション・アパートでは、断熱性・気密性・日射取得がいずれも不足しており、室内が外より寒く感じやすいです。
断熱性・気密性が低く熱が逃げやすい

多くの古い賃貸住宅では、壁・天井・床に十分な断熱材が入っていません。断熱材が薄かったり無かったりすることで、室内の気温が外気並みに低くなります。
また、窓サッシやドアまわり、エアコンの配管スリーブなど隙間があることで、外の冷気が侵入したり、室内の暖気が逃げたりします。
特に木造や軽量鉄骨造の物件では、外気の冷たさがそのまま内部に伝わりやすいです。

築年数が古いと、窓サッシの劣化によりサッシの隙間から熱が逃げているケースも多くあります。
太陽光(直射日光)が影響

外は太陽光の直射や反射が体感温度に影響します。
しかし、室内に日射が入らない賃貸物件では日射による温度上昇がほとんどなく、冷気が室内に残りやすくなります。よって、外より部屋の中が寒いと感じるのです。
このように、「断熱」「気密」「日射」の3点が不足している賃貸住宅では、外より室内が寒くなる構造的な原因が存在します。
まず対策をすべきなのは、「窓」
賃貸では壁・床・天井の抜本的な改修・リフォームが難しいため、窓の熱の出入りを防ぐことが最も現実的で効果的な第一歩です。
窓から熱が逃げる割合の高さ

住宅全体における熱損失のうち「開口部(窓・玄関・換気口)」が大きな割合を占めています。
特に窓は熱の出入りを左右するポイントで、暖房時に熱が外へ逃げ、冷房時には冷気が室内へ入る経路となります。

窓からの熱流出は約6割と言われるほど、影響が大きいです。
壁・床・天井改修は賃貸では現実的でない
賃貸物件では原状回復義務や貸主・管理会社の許可が必要となるため、壁の断熱追加・床下断熱・天井裏断熱といった大規模改修は難しいです。
貼って剥がせる範囲のDIY・簡易対策に限られるため、窓は対策するのに効果的な場所です。
気密性を対策しないと、補助暖房も効かない

エアコンが効きにくいからといって、どんなにファンヒーター等の補助暖房を導入しても、部屋の気密性・断熱性が低いままだと暖まった空気が外に逃げ続けて効率が悪くなります。
つまり、暖房器具に頼る前に、「窓」の断熱性・気密性を改善しておくことが先です。
賃貸でもできる窓の寒さ対策3選
賃貸物件でも実践可能な「断熱カーテン」「すきまテープ」「断熱シート(プチプチ)」の3つの対策をご紹介します。
①断熱カーテン

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まず、厚手の断熱カーテンを導入することで窓からの冷気侵入を緩和できます。
カーテンそのものが冷気を遮る役割を果たし、また窓とカーテンの間に「空気の層」をつくることで断熱効果が上がります。

丈を窓下まで十分に伸ばし、床まで届くタイプにすることがポイントです。
②すきまテープ

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次に、窓枠とサッシの隙間などに「すきまテープ」を貼ることで、冷気の侵入経路を塞ぎます。
隙間を放置しておくと暖房効率が低下し、体感温度が下がってしまいます。築年数が古く、窓サッシが劣化しているほどこの対策の効果は高いです。

賃貸でも貼って剥がせるタイプを使えば原状回復の心配も軽減されます。
③断熱シート(プチプチ)

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最後に、窓ガラス面に貼るタイプの断熱シートや、梱包材である「プチプチ(気泡緩衝材)」を利用する方法があります。
窓ガラスに貼るだけなので、DIY初心者でも導入しやすいです。
窓ガラスに直接貼ることで、ガラス面から出入りする熱を抑え、さらにカーテン・すきまテープと併用すれば断熱効果をより高められます。

見た目が気になる方にはおすすめできませんが、低コストで実践できる方法です。私も学生時代に住んでいた安いアパートで実践していました。
次に取り組むべき、暖房効率アップの工夫
窓対策で気密性・断熱性をある程度整えたうえで「サーキュレーター」「ラグ・ジョイントマット」「補助暖房」を使うことで、暖房効率が大きく向上します。
サーキュレーターで暖気を循環

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エアコンの暖気は天井付近に溜まりやすいので、足元など床付近は冷たく体感温度が上がらないことがあります。
そこで、サーキュレーターを用い部屋内の空気を循環させることで、床付近にも暖かい空気が行き渡り、体感温度が上がります。
サーキュレーターの選び方とおすすめモデルは以下の記事で紹介しています。参考にしてください。
サーキュレーターは部屋の広さで決める!選び方と厳選7選|一級建築士厳選【2025年版】
エアコン単体で暖まりにくい場合、温風サーキュレーターもおすすめ
近年、通常のサーキュレーターの機能に加え、ヒーター機能が付いた温風サーキュレーターが注目されています。
「足元の冷え」や「暖まりにくい部屋」を改善したい場合は、温風サーキュレーターが効果的な場合もあります。詳しくは以下の記事で紹介していますので参考にしてください。
【検証】温風サーキュレーターは電気代が高い?一級建築士が選び方を解説
ラグやジョイントマットで床の冷えを軽減

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床が冷たいと足元から冷えてしまい、体感温度が下がります。
厚手のラグやジョイントマットを敷くことで、床面からの冷気流入を防ぎ、快適性が向上します。
補助暖房の安全な選び方/使い方

賃貸住宅では、石油ストーブやガスストーブが安全の観点から使用NGとなっているケースが多いです。

NGかどうかは、契約書を確認しましょう。
その場合、賃貸における補助暖房は電気式の暖房を選ぶ必要があります。
賃貸でも使える代表的な暖房器具を、以下に比較表としてまとめました。それぞれ範囲、即暖性、電気代、安全性に特徴があるため、生活スタイルに合わせて選ぶことが重要です。
| 暖房器具 | 範囲(部屋全体 or スポット) | 即暖性 | 電気代 (1時間目安) | 安全性 |
|---|---|---|---|---|
| オイルヒーター | 部屋全体 | △ | △(約16〜37円) | ◎ |
| セラミックファンヒーター | スポット~部屋全体 | ◎ | △(約10〜30円) | ○ |
| 電気ストーブ | スポット | ◎ | △(約10〜20円) | △ |
| パネルヒーター | スポット | △ | ○(約5〜10円) | ◎ |
| ホットカーペット | スポット | ○ | ○(約7〜10円) | ○ |
| 電気毛布 | スポット | ○ | ◎(約0.1〜3円) | ○ |
例えば、オイルヒーターは空気を汚さずじんわり暖めたい場所(寝室やリビング)、セラミックファンヒーターは即暖性が必要な脱衣所などの短時間使用に向いています。

ただし注意点として、部屋の断熱性・気密性が低いまま使うと効率が落ちます。窓対策で気密性・断熱性を向上させてから補助暖房を使用することで、暖房効率が格段に上がります。
オイルヒーター

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寝室やリビングにおすすめの補助暖房です。
部屋全体をムラなく温めることができ、長時間使用しても乾燥しにくく、安全に使える暖房器具です。ただし、立ち上がりに時間がかかるため、スピーディーに部屋を暖めたい場合には不向きです。
セラミックファンヒーター

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脱衣所やデスクワーク時の足元におすすめの補助暖房です。
即暖性が特徴で、約1~2分で温風が出ます。部屋全体を暖めるよりは、スポット的に暖房する方が向いています。
まとめ:賃貸住宅の寒さを構造から理解して解決する

賃貸アパート・マンションにお住まいのあなたが「外より部屋が寒い」と感じる原因は、壁・床・天井の断熱性不足、窓サッシおよびガラスの性能劣化、気密性の低さ、そして日射取得の乏しさにあります。
改修が難しい賃貸では、まず「窓」の出入り熱を防ぐ対策から始めるのが最も現実的で効果的です。断熱カーテン、すきまテープ、断熱シート(プチプチ)という3つの対策を実践すれば、費用・手間ともに抑えられます。
次に、窓対策によって一定の気密・断熱性を確保したうえで、サーキュレーターによる空気循環、ラグやジョイントマットによる床冷え対策、適切な補助暖房の活用で暖房効率と快適性を高められます。
これらを組み合わせることで、「外の方が暖かい」という冬のストレスから解放され、賃貸でも快適な住まいを手に入れられます。




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